墨汁一滴 208048

日がな一日たまを追いかけて


万葉集289-291番 天の原

1:しげとし :

2021/07/26 (Mon) 05:01:40


  間人(はしびと)ノ大浦の新月の歌
289:
天(あま)の原ふりさけ見れば、しらまゆみ張りて懸けたり。夜路(よみち)はよけむ

大空を遥かに眺めて見ると、白木の弓を張って釣ったように、三日月が出ている。これを眺めながら歩くのは、面白いことだろう。

Looking back
on the fields of heaven,
I see the moon suspended
like a drawn white bow
   of spindlewood ;
the night road should be good.

290:
椋橋(くらはし)の山を高みか、夜ごもりに出で来る、月の光ともしき

あ、月が出て来た。椋橋山が高いからか、夜更け渡ってから、出て来る月の光が、ほんとに見事なことだ。

  小田ノ事主(ことぬし)の脊の山の歌
291:
真木の葉の萎(しな)ふ脊の山、忍(しの)ばずて我が越えゆけば、木の葉知りけむ

檜(ひのき)の葉の萎(しお)れている脊の山よ。大和に置いた妹のことが思い出されて、辛抱が出来ないで私が越えて行くので、私の心に感応して、このように萎れたのであろう。


 青空の下、背筋を伸ばして咲いている向日葵の花も、やがてうつむき加減になり背中も丸まって来ます。その姿によって眺める時の心持は変わって来ます。ところが、291番の歌の作者は、檜が私の心を知って葉を萎らせている、と詠っています。当時は、今よりずっと自然との交感が強かったのでしょう。


追申.
 オリンピックが開催されているのだから、オリンピックに触れておくのが順当だろう。

 新聞のページをめくって行くと、開会式の花火が国立競技場から上がっている写真が載っていた。デザイン競技で選ばれたザハ・ハディット案が白紙撤回された後に設計建設された競技場だ。木造だというからどのような建築物かと思っていたが、花火を打ち上げても大丈夫なのであれば、木造とはいえ、うわべだけのことなのだろう。(木造の歴史的建築物の周囲には決まって火気厳禁とある)
 しかし、オリンピックが「平和の祭典」と呼ばれるのはうわべだけのことであれば、よくよく考えて作られたのだろう。聖火ランナーが着るシャツの赤い斜めのたすきの模様は、引き千切られたように途切れ途切れになっていた。これも同じように、何かを象徴している。

 さて、菅義偉首相は米国のテレビのインタビューで、「世界中で40億人以上がオリンピックを観戦するだろう。そういう状況下で、コロナ禍を克服し、開催することは、真の価値がある」と語ったそうだ。
 この記事の裏表ページの表のページの同じ位置に、福沢諭吉の、「人事の軽重大小を分別し、軽小を後にして重大を先にし、その時節と場所とを察する働(はたらき)を公智という」という言葉が載っている。
 ページの裏表にあるから言う訳ではないが、菅首相は、何を先に行うべきかの判断を誤ってしまった。来る衆議院選挙で勝利して首相の座にあり続けたいという欲望から、自己の希望的予測から逃れることができなかったのだろう。

 この期に及んで、菅義偉首相はファイザー社にまたワクチンの前倒し供給を依頼したようだ。日本の新型コロナウイルスの感染者が他国より少ないことを誇るのであれば、供給の前倒しを頼むより、より緊急を要する他国に譲るべきであろう。新型コロナウイルス感染症への対策が他国より優れているなどと考えているならば、新たなパンデミックが起こるたびに同じことを繰り返すことになる。


墨汁一滴202107TA 口訳万葉集289-291番 天の原

2:ひろおか :

2021/07/27 (Tue) 15:34:00


 台風8号が来るというので、本の狭い畑だが、作物が風に倒されないようにするのに大変だった。何しろ天気が良くて、暑くて作業がはかどらない。そして、その良い天気のおかげで、風に煽られて折れないようにと留めておいた蔓の先端も、翌日出掛ければしっかり伸びている。
 幸い台風の進路から外れたので、被害を受けることなく元の姿でいるだろう。幸いと書いたが、これがまた難しい。台風がどの進路を取ろうとも、何処かの場所が直撃を受けて泣くことになる。

 さて、追伸に、「オリンピックに触れておくのが順当だろう」とあったのでそうしておく。

 コロナ下で開かれたオリンピックであるから、来日後に陽性と判定され、棄権を余儀なくされた代表選手が出た。新聞の言葉を借りれば、「悲嘆に沈むアスリートを慰める言葉が浮かばない。試合出場が許されず、敗者になる機会さえ奪われるとは」である。
 だが、新聞のこの言葉に同感する前に浮かんだのは、何年か前に万里さんが紹介してくれたダウン症の女性の、「私たちを殺さないでください。あなたの命と私の命とはどう違うのでしょう?」という言葉だった。

 オリンピックの選手であれば試合に出る機会を奪われるだけであるが、「新型出生前診断(NIPT)」が進めば、この国の社会状況であれば、生まれて来る機会さえ奪われる命が増すだろう。
 僕たちの国は、両親がその命を生んで育てようとする時に、安心して生んで育てることが出来る社会だろうか?
 オリンピックを自国で開催してバカ騒ぎをするのもよいが、税金の膨大な無駄使いにすぎない。その前にしなければならないことが山積している。


余滴202107TA Re:万葉集289-291番 天の原


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